はい、しぇもちゃん、こっち見て、よう先生がお話してるよ? ほらほら、みんなおりこうにお話を聞いてるよ?
ねえ、どうして壁を見てるの? ん? 骨見てるって? そうだね、骨みたいな模様だね。昨日も、一昨日も、入園してからずっと、しぇもちゃん、あれ見てるよね。
でもね、先生がお話してるときは、きちんと先生のほうを見ようね、って、しぇもちゃん、聞いてるかな、ねえ、しぇもちゃん――
思うに、うん十年前(から)、しぇもんごさまの周囲ではこんな光景が常に繰り広げられていたのでしょう。そして今では、この世界に転生してきた「次世代」がそっくりな光景を繰り広げてくれているのでしょう、きっと。
三つ子の魂百まで、雀百まで踊り忘れず、狼はどんなに飼い慣らしても森を見る、生まれつきの性格はフォークで追い払っても駆け足で戻って来る、蟹を縦に歩かせることはできない……同じ「こだわり」が死ぬまで、いや転生してもその魂のアイデンティティとして残ってるのって、なんだかほっとします。
主人公の俺が女神の耳飾りが気になりすぎて、異世界転生に集中できなくなるコメディです。
相手は心を読める自称女神。
心が読めるとわかると自然と主人公の口数が激減。それに反して相手の口数が異常に増えて行く。
側から見れば、女神だけが独り言を連発しているシュールな会話が堪りません。
俺から放たれる想定外の脳内思念。ノーガードでの殴り合いに女神が翻弄されていきます。
主人公の俺TUEEEEE!!!
女神頑張れ!!!
しきりに「異世界転生特典は何にしますか?」とマニュアル的に本題へ戻そうと仕切り直す女神。結構投げやりだったりする女神を握る手グーで応援したくなります。
ここでもしぇもんごワールドが遺憾なく発揮された衝撃作。疲れた心と身体をレベチなコメディで癒すべく、一旦この場で骨抜きにされてしまいましょう。
過酷でした。何が過酷かって笑いを堪えるのが、です。
勢いではなく、言葉で腹の底をくすぐられて……。
外出中に読むのはおすすめしません。苦行になります。お家で声を出して思い切り笑って下さい。
私はただの作者様のファンなのですが、作者様は何を書いても読み手に文字数を感じさせない、魔法の手をお持ちの方です。
作者様の凄いところは、途中でがらっと空気を変えても違和感を感じさせないところ。読了後、すっと胸に沁み入るところ。
落とすところは落とすし、緩めるところは緩める。
荒れ狂う言葉を縦横無尽に操る様は、鷹匠の如く。
皆さまもきっと骨抜きになるはず!
読んで欲しいピ!
……えっ「『ピ』て何ですか」って?
それはお話を読んでからのお楽しみです。
カクヨムコンテスト終盤。
疲弊し切った全ての皆さまに、おすすめいたします!!