本作は実話系怪談の類型です。
忌まわしさや悍ましさ。
人が嫌だと思う対象。
その多くの源泉は〝人間〟なのです。
怪談が本来、描く対象。それは────
人は人が怖い。
人の行いが怖い。
人の思いが怖い。
死んだ人が怖い。
人に由来する怖さなのです。
猛獣が怖いとか事故が怖いとか災害が怖い。
そんなものとは、種類が異なるのです。
本作はその肝心な一点を見事に貫いています。
揃いも揃って常軌を逸した人ばかり。
しかも、何処かにいそうな確かな存在感を持っている。
それもそのはずです。
作者のジロギン2は、前書きでこう記しています。
〝筆者とその知人が遭遇した「奇人」とのエピソードや、実際に起きた事件を元に執筆した〟
本作は、実話ベースの物語なのです。
ここには、リアルな恐怖が並んでいます。
どれからご覧になりますか?
それとも見ないでいますか?
でも、あなただって────
何処かで出遭うも知れませんよ?
こんな、奇人たちに。
『殺し屋ボルタ―ガイスト』のジロギン2さまが蒐集したヒトコワ事件簿です。読めば、思わず鳥肌立ったり、痛そうで顔をゆがめたり、あるいはいたたまれない気持ちになるものも。
ご自分の体験や身近な人たちからの情報を素材に一部加工なさっているとのことですが、これだけの数のお話をよくも集めたものだと感心させられます。
いや、もしかすると、こういうヒトコワ事件って、きちんと周囲にアンテナを張り巡らしていたら、意外にたくさん起きているものなのかもしれません。というか、自分自身が怪異のように見なされている可能性も……
読破すると、周囲を見る目が少し変わるかもしれません。
これはドキュメンタリーなのか。
それとも作者の巧緻なフィクションか。
全く判断がつかない程、臨場感が犇々と
伝わって来る。1話完結で42話。
もうこの辺りは作者の仕掛けなのかとも
思われるが、内容が余りにも濃い。そして
こういうヒト、います。
ニュースや新聞で大々的な事件になって
いる様な話から、昨今よくある民事的な
トラブル、そしてそれは易々と死に直結し
改めて事件化されたり…されなかったり。
幽霊や化け物が出て来る怪異的な話よりも
遥かに恐ろしい…。
そんな話が、ライトなタイトルのもと
続々と息を潜めている。
本当に、本当に怖い話を読みたいと思う
強者は絶対に外せない。
読後、精神の保障はないけれども。