ばくだん

夕日ゆうや

ばくだん。

「これが俺のばくだん定食だ!!」

 そう言って料理長はトロロにオクラ、納豆、生卵をのせた普通の料理をもってきた。

「ははは。よくある定食じゃないか」

 僕は笑い飛ばす。

 先刻、僕はこのお店にあるばくだんを食べたいと言った。

 実際はここにばくだんを隠している可能性が高いとの判断だった。

 ばくだんがあれば僕たちスワィットは解体処理をしなくてはならない。

 この日本において、ばくだんを保管しているのは法律に反する。

 大量の火薬を貯めていると聞いた。

 その名も『花火屋』。

 定食料理店で火薬は使わないだろう。

 その判断が上層部からくだされた。

 僕はその審議を確かめるべく、調査に入ったのだ。

 ばくだんと聞いてピクリとも驚きはしなかった料理長。

 しかし。

「ここからがうちのばくだん定食だ」

 料理長はどこからか出した爆竹をばくだん定食の周りに巻き、着火。

 バチバチと弾ける音とともに、ばくだん定食から煙りが上がる。

 くすぶった火薬の匂い。

 煙った定食を除き見ると、灰と一緒に炙ったような色合いになる定食。

「ははは。バカな」

「うちの名物でな。火薬が必要なのが玉に瑕だ」

「そうか。それで火薬を……いや、ダメだろ。申請したのか?」

「え。でも創業二年いらい、ずっと……」

「ダメなものはダメだ。すぐに警察に連絡する」

 こうして定食屋の花火屋は看板を下ろすこととなった。

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ばくだん 夕日ゆうや @PT03wing

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