クセある個性と純度

ちょっぴり複雑な家庭のイベントを覗き見る物語です。

数字の説明や回想のタイミングにクセがあって多少読みづらさがあるのだけど、その中を進む推進力が物語に説得力をもたらしているような気がします。険しい道を進むこと自体に価値が宿るような?

一方で出来事はとんでもない問題を抱えているわけではないです。家族が笑顔で迎える日常を嫌々でも受け入れられるくらいの出来事をきちんと嫌がる話です。でもだからこそ語るべきことでもあります。大したことじゃないと言えてしまうことは、社会が常に議論する大きな問題と違い細かく語るべきです。

その二つの要素はたぶん別々だとそこまで効果を発揮しないのですが、この組み合わせではよく効いてるように感じます。読み易いわけでもなく、大げさなテーマでもない。でもだから成り立っている感覚があります。理解されないマイノリティーをなりふり構わず語ることで、切迫というか、芯から響いている感じがします。


レビュー時点で2話までで完結していなかったために結末について追記します。

結びは柔らかいです。文体は複雑さがあって硬いのですがモチーフが柔らかいです。シーンの移り変わり、というより思考の順番がユニークです。でもその先にしっかりと家族の平和な距離感や恋愛の要素があっておもしろい。このギャップも気持ちいいです。

見切り発車レビューで申し訳ないです。あらためておすすめです。

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