『父』の人生。
そして『息子』の人生。
二人の、いや、さらにはその『孫』の人生までもが、短い短歌の中にそのまま綺麗に落とし込まれています。
脈々と受け継がれていく命と、その愛情と。
家族でしか知り得ない無言の対話が、憧憬や幸福、裏に潜む寂寞と共に胸に響きました。
私が一番好きな短歌は、
手を取りて 最後に交わせた ありがとう
積もる話は 天国でまた
の一首です。
しっかりと交わせた最後の挨拶と、その幸運に。
そして何時かの再会の日に、思いを馳せて。
とても美しいな、と感じました。
私自身の経験なども重ね合わせて、とても心を打つものがあります。
これは色々な人達に読んでほしい一作だと思います。
おすすめですので、是非読んでみて下さい。
短歌を詠む、難しく考える方も多くいらっしゃるかもしれませんが、僕はそう考えません。これは小説を書く時にも言えるのですが、「幻を追いかけてはいけない」という事です。
僕は正直な言葉が好きです。
難しい言い回しでも、単純な言葉の羅列でも、テクニカルな表現でも、言葉というものは伝える者が「誠実か不誠実であるか」、ここに表現の全ては集約されると考えます。
短歌を難しいと考えてしまう根幹は、「自らの内に存在しないものを詠もうとするから」です。もし、書く言葉に迷ったら「誠実であれ」と僕は思うのです。
本作を読ませて頂き、そこにある真っ直ぐな言葉が心に響きました。
父を失くされた筆者様が語る言葉は、ただ純粋で、真っ直ぐで、温かいものです。
だから、僕はこう書きます。
31文字では収まり切らない想いが、ここにはあります。
無限の想いが短い言葉の中で確実に「生きている」のです。
それが伝わるからこそ、「短歌」は素晴らしいのです。
僕は短歌の根源とは、そういうものだと考えています。
お勧め致します。
皆様がいると言う事は、必ず「父」という存在があります。様々な親子の形がそこにはあるかとは思いますし、必ずしも同じ気持ちではないかもしれません。ですが、それでも一度お読み頂きたいと願います。僕は様々な想いが溢れ、じーんとしました。
皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)