――ねぇ、フィクス、俺と友達になってよ。
タマゴ型AIロボット、フィクス「(◎△◎)」
フィクスたちは卒業後、生徒たちから貰った学習データを頼りに
実験都市で、働き、あるいは暮らす。
デザイナーになるの? それともフェイクニュースを流してしまうの?
生徒たちの背中を学習して、どんなものにでも育つフィクス。
育てるって責任重大。まるで弟や妹が出来たみたい。
俺の全部をあげる。
特技も、悩みも、みんな学習して欲しいんだ。
だから目を背けていたかったんだ。AIが人間を淘汰するかも知れないなんて。
人とAIは一緒に育っていく。でもその道は楽しいだけじゃない、痛みや危険が伴う。
――自然や五感、心を描くことに定評のある作者の、少年とAIが成長する物語。
「感想」
フィクスかわいかったです。欲しい!(>△<;)
何もかも全部代わりにやって!
育成物語なのにAIとの友情に危険性が潜在していて、スリリングで読み応えがありました。そう、今回は対立とスリルがすごい。
AIと有用性と問題点がディベート的に対立して、緊張感もちながら学べました。
実験都市は生徒から学習データを採取してます。まだまだ謎めいているので怖々読んでいます。
4章冒頭、AIと人間って一緒に育つといっても、発達の仕組みが違うんだと思いました。
考えたこともなかったからすごい着眼点だなと思ったし、たぶん人間の心の仕組みをすごく観察してきた作家さまと思うから、どう影響及ぼすか気になるし怖くもあります。
その中でも生成AIの話はひときわ興味を持ちました。良琉くん×レイメイ。
第三話の生徒たちの生成AIによる創作はすごく楽しそうで、誰でも創作に加われる時代は、きっと世の中にとって素晴らしいのだろうと思いました。
一方で手描きは、AIより上手くなければ鑑賞する側から認められなくなる惨めさや、人間らしい独創性で戦おうとしても発表した瞬間、学習されてしまう虚無感は、創作の場にあって息を呑みます。
プロンプトでだいたいイメージ通りの絵が描けるようになったら、自分で絵を描くことは無意味になってしまうのでしょうか。
でも美術の時間、クマゼミや信楽焼きを観察したり、着物を描くために着付けの本を読んだり、画材による特性の違いとか。
描く楽しさって、絵が出来上がっていく過程にもあると思うから、良琉くん、がんばれ!
天才VS天才を学習するAI。友情と対立が場面で入れ替わる、まさにライバルですね。
長編は骨組みが大きくて、やはり短編とは別物です。
一度大きな感動を貰っている長編のきみどり様が帰ってきたなぁと感慨深くなりました。
苦しんだと言われるこの作品、でも出会えて本当によかった。
子供一人一人にタブレットが貸し出される現代。
それがいつか一人一台のAIロボットに代わることも、地続きの現実としてリアルにイメージできる時代になりました。
本作は、AIロボットと共にある学園生活を描いた物語です。
主人公たちが貸与されたAIロボットは、まっさらな赤ちゃんの状態。彼らは相棒にさまざまなことを教え、育てなければなりません。
この設定が、素晴らしく生きていると感じました。
生徒たちと共に成長していくAI。これによって起こり得る良いことや悪いことが、誰にでも分かりやすい話の運びで綴られていくのです。
AIが誤った情報を真実のように伝えてしまうハルシネーションの問題。
創作物と生成AIの問題。
学園生活の中で育まれていく、知能と情緒と関係性。
バディであるAIは、道具なのか、友達なのか。
子供たちに進路があるように、AIロボットにもまた進路があるようで——
ワクワクする舞台と設定、リアリティあるストーリーで、続きがとても気になります。
彼らがどんな道を選び取っていくのか、しっかりと見届けたいです。