新興宗教に潜む闇をアンチヒーローが突き止める
- ★★★ Excellent!!!
何事も合理的に済ませる霧山真直が一枚のチラシを手にしたところから物語は転がり始める。
美人教祖が微笑む紙面に綴られたのは二十年前に生まれた十年前に解散した『サルベイション』のものだった。真直の脳裏には彼女の記憶が焼き付いている。死してなお復活したとは語る教祖は何者なのか。
真直はその真実に挑む。
不摂生、引きこもり、コミ障、手段を選ばない。全くもってヒーローらしくない主人公をなぜか応援したくなるのは人間味が溢れているからではないでしょうか。過去の過ちに目を背けず、自身の弱さに足掻く姿をつい追いたくなりました。
どこか淡々とした筆致で紡がれる切迫した世界観。プログラミングやAIの知識は、明るくない私にもすんなり入ってきたので、物語に染み込むほどに調べものをされたのだろうと驚かされます。
現代に起こりうるかもしれないと恐怖を抱かずにはいられないサスペンス。リアルが密につまった頁をめくる手が止められなくなること必須です。